第5章 新学期、そして転入生
クラスでも話題に挙がるのはやはり転入生のこと。
しかし、出てくるのは罵詈雑言。転入生を見たものやその転入生を見ていないものたちでさえも不平不満を口に出す。
―聞けば、その転入生は明らかにミーハーなのだと言う。なのに、そういう類いのものが嫌いな仁王も丸井も初対面の彼女にデレデレ、らしい。
私自身が当の本人を見ていないから何とも言えないのだが、まあ見るつもりは更々ない。だが、ミーハー嫌いのテニス部がそこまでなったことには疑問を持つ。
考え込み黙りこんだ私に目の前にいる精市の眉間に皺が寄る。
そういえば精市と話をしていた途中だった。
「···どうしたんだい?希が話の途中に考え事なんて珍しい」
『いや···、そういえば何のh「こんにちはぁ、精市君っていますかぁ?」···お客のようだな』
一つの甘ったるい甲高い女の声
厄介事の予感がめっちゃする
私が苦笑いのまま言うと
精市はその美しい顔の眉間にシワを寄せる
ごめん、と私に声をかけ
はぁぁ、と重い溜め息をついたあと渋々立ち上がって彼を呼んだ人物のもとへ向かう
呼んだ人物は今まで見たことのない顔、と言うことは例の転入生か。こいつが来たとたんクラスの空気が鋭利なものとなった
精市がいなくなったので手持ちぶさたになった
アイツがいないだけで心に虚無感が生まれる
いつの間にか私は随分と精市に絆されていたようだ
昔、と言うより前世の私からしたら到底あり得ない事だった
一人の男の言動に一喜一憂するなど
ハァ、と重い溜め息を吐く
顔を机に臥せる
教室がやけに静かだ、と思い顔を上げた
全員が青い顔で廊下を見ている
何事かとそちらへ顔を向けた
目に入ったのは、冷気
可視が出来る程に冷たい
それを放っているのは、言わずもがな精市
目の前には少し怖がっている様子の転入生
思わず顔がひきつる
「あのさ、どうして会ったこともない赤の他人の君が俺の名前を、しかも名前で呼んでいるのかな」
「そ、それは蓮二君が教えてくれてぇ···」
「へぇ、それで?」
「···え」
「だから何でそれで俺の事名前呼びになるのさ。俺、名前呼ばれるの認めた奴しか許可してないんだよね。だからさ、勝手に呼ばないでくれる?虫酸が走るんだよね。あ、もしかして理解出来てない?君ってそんなに理解しようとする頭がないんだねフフッ」
怖ェ···