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第7章 決意


「それ、俺が使ってるのと同じじゃねぇか」

「はい」

エミは苦笑いしながら答えた。

「初めて兵長の部屋のお風呂をお借りした時に気付いていたんです。
でも兵長には関係ない事なので黙っていました」

懐かしい目で入浴剤を眺めるエミを見て、変な気分になった。

「言ってくれれば変えたんだが…」

「いえ、むしろ嬉しかったです!
父も私と同様に兵長の事を慕っていたので、もしかしたら隠れて兵長と同じ物を使っていたのかなって。
でもこれ、他のより随分お高いんですね」

エミが言うとおり、この入浴剤は他のより倍の値段がする物だ。

リヴァイは入浴剤を取り上げるとレジに持って行き購入した。

「もしかして買う予定だったんですか?」

「いや、お前にやる」

「えっ...
でも明日には私は内地に...」

「中央の部屋なら浴室付きだろ。
これがあれば父親と俺の事を嫌でも思い出す」

リヴァイなりの気遣いだったが良かったのかは分からない。

ただ入浴中ぐらいは辛い日常から離れて欲しいという気持ちだった。

「兵長、お優しいですね」

にっこり笑うエミを見て恥ずかしくなり急いで店を出る。

「他に行きたい所はあるか?」

「そうですね...
外出する時は本屋しかあまり行かないので、私は特には...」

「なら決まりだな」

「へっ?」

きょとんとしたエミの手を握りリヴァイは平然と歩き出した。

「ちょ…兵長、さすがに手を握るのは…」

「嫌なのか?」

「嫌では無いですが…」

「なら問題ない」

今まで連れ回してくれたので今度は俺の番だ、とでも言うように一直線に歩く。

そしてエミが連れて来られた場所は少し街から外れた小高い場所だった。

「凄い...
こんな場所があったなんて...」

エミが目を丸くして驚いているのを見てリヴァイは嬉しかった。

近くにあったベンチに座り街を眺める。

「ここは平和ですね」

「俺は非番で暇な時はここに来る。
ここにいると何もかも忘れれる」

そう言うとリヴァイは隣に座るエミの頬にキスをした。

「俺がここに誰かを連れて来るのは永遠を誓った奴だけだと決めていた」

「兵長...」

リヴァイの存在が今はエミの支えだ。

そして明日から訪れる不安が怖かった。
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