第1章 出会い
「お、トーカ今帰り?」
「あ、はい!」
下駄箱で唐突にかけられた声に振り向くといつもの先輩の姿があった。
「あれ、今日ヨリコチャンは?」
「今日は部活があるみたいです。先輩良ければ一緒に帰りませんか?」
「ん、あたしも誘おうと思ってたところ」
入道雲が高くなっている空の下を並んで歩けば自然と会話が弾んで笑顔になれる。
「にしてもくっそ暑いなあ〜!」
シャツの襟をパタパタと仰ぐ先輩は夏だというのにカーディガンを羽織って、「暑い」と言っている。
それが可笑しくてつい吹き出す。
「先輩暑いんならそれ脱げばいいじゃないですか」
「オリジナリティー無くなるだろーやだよー」
学校規定の制服は夏はシャツにスカート。カーディガンは着てもいいがもちろん先輩のはどこぞの服屋で買ったもの、校則違反だ。
まあそんなの今に始まったことじゃない。
「あ、そうだ。トーカこの間誕生日だったよな?ちょっといいアクセ屋見つけたから何かプレゼント買わせて」
1週間程前、18歳の誕生日を迎えた私は『あんていく』でサプライズパーティーをしてもらったことを思い出し、思わず口元が緩んだ。
先輩は19歳で私と同じ高校3年生。
なんでも入学して直ぐに大きな病気をして1年間入院することになり、仕方なく17歳からもう一度1年生をやり直したそうだ。
「いいんですか!?行きます!!」