第22章 ダメ男
「ヤクザ―――」
「同業者だ。」
春本の言葉を渡瀬が遮った。
そして、切るエンジン。
抜く鍵。
ドアを開けて降りていく。
「いやぁ、お見苦しいものを見せてしまってすいませんね。」
髪を整えながら、乱れた髪を治す頬に傷のある男。
「いや、かまわないです……"松下"さん。」
そう言った渡瀬の眼鏡がギラリと光る。
「最近調子どう?」
「カツカツです。」
「あぁそう。」
松下がまた髪をかきあげた。
まるで、腕につけられている某ブランドの高級時計を見せつけるかのように。
けれど、渡瀬はチラリとそれを見ただけで、興味無さそうに鼻で笑った。
「なんかあったんですか?」
「いや、たいした事じゃないんだけどね。……あぁ、そうだ。ちょうどいいや、君手伝ってくれる?」
「は?」
「二十万でどう?」
松下が指を二本上げた。
「意味がわか―――」
「詳しいことは事務所で話すから車でついてきて。」
松下はニヤリと笑うと、渡瀬に背を向けた。