第16章 外れる鎖
「あぁ…今日ほど気分が良い日はないな。」
"生活安全課"
そう標された広い部屋の中。
沢山ある机の内のひとつの椅子ににデカデかと座り、橋田は高笑いしていた。
タップリと肉の付いた弛んだ顔が、汚ならしく歪んでいる。
「橋田さん。」
一人の若い刑事が、そんな橋田に声をかけた。
「なんだ?」
にこやかに笑う橋田。
いつもなら格段に低い筈の声色は、機嫌が良い為少々高い。
若者はそれが不気味で仕方がなかった。
「岩中って人が来てますが話があると……。」
「岩中?」
聞き覚えのない名前に、首を傾げる。
そして、橋田は何となく部屋の入り口を見た。
「あいつは…――。」
すると、彼の顔が一気に歪む。
口元は力無く垂れ下がった。