第14章 喧嘩の渦
「ごめん……もう――。」
「だから、意味わかんねぇっつってんだろうが!!"さよなら"ってなんだよ!?俺、お前に悪いことしたか?そりゃあ…無視した事は反省してる!!だけどよ、やましいことなんて1つもねぇんだよ!!こんな妖怪なんか、興味ねぇよ!!俺が興味ある女は"朝日桜"……お前だけだ。」
大きな声でハッキリと言った誠也君。
「あたし達が妖怪?」
女達の顔が歪んだ。
「…恋愛とか意味わかんねぇ。」
清治君はあたしから手を放した。
「だから……行くんじゃねぇよ。」
先程とは打って変わって吐き出される小さな声。
今まで何回こうして喧嘩をするたびに仲直りしてきたのだろうか。
いつも謝るのは彼。
悪いのはあたしでも、必ず彼が謝る。
それに甘えてきたあたし。
とんだワガママ娘だ。
「ごめん……。」
だから、今度はあたしが謝る。
「なにが?」
けれど、彼は不思議そうな顔をした。
「疑ってしまったから…。」
俯きながら小さく答えた。
「…そんなん気にしてねーよ。」
「え?」
聞こえてきた声。
思わず顔を上げた。
「お前がいなくなる方がずっとつれぇんだ。」
そう言った彼の顔は優しかった。