第10章 喧嘩王子
「あぁ、けっさくけっさく。」
そう言って走る宮田。
お酒を何杯も飲んだせいか、額に汗がにじんでいる。
けれど、前からくる冷たい風が肌に当り、ひんやりとした感覚を彼に与えている。
「待てコラァッ!!」
遠くから聞こえてくる、先程の男達の声。
振り向けば、ゾロゾロと走っている群れ。
「さいっこうッ!!」
その光景に、何故か宮田は興奮していた。
ゾクゾクする感覚と、喧嘩への熱い闘志が彼の中で涌き出ている。
「クソガきゃあ、ケツ割り(逃亡)ばっかしてからに!!」
追いかけてくる男達が叫んだ。
「ケツ割りってなんだよ?業界用語使ってんなよ、オッサン!!」
宮田も負けないくらい叫ぶ。
「じゃかぁしいわ!!逃げんな言うとるやろうがッ!!」
「逃げる?」
宮田の足が止まった。
その横を人が通り過ぎていく。
「やっと観念したか。」
そう言って遠くから近付いていく男達。
「逃げるって…誰が?」
宮田がゆっくりと振り返った。
ダッ―――
そして、走りだす。
今度は男達に向かって。