第1章 絶望の宴
「くだらん……実にくだらん.愛などなんだの所詮クズの考える事だ。」
いまだ銃口を動かなくなった彼女に向けた花村が、高笑いしている。
「 … ッ!!」
震える手で愛しいその人をギュッと誠也は抱き締めた。
「藤堂!!救急車を呼べッ!!」
ポーカーフェイスを崩した白川が叫んだ。
「分かった!!」
藤堂が慌てて携帯を出した。
「クソが、花村――。」
手を血に染めた江田が、激しく花村を睨み付けた。
レイカは動かなくなった父親を抱き締めている。
涙で頬を濡らしながら。
「命を助けて欲しいなら、俺の前にひれ伏せクズ共。」
汚ならしくつり上がった口から吐き出される汚い言葉。
それがなお、誠也の心の炎を燃え上がらせた。
「テメェ……。」
彼の瞳孔が一気に開く。
微かに息をする彼女を床に置いて立ち上がった。
パァンッ―――
その瞬間鳴り響く銃声。
誠也に痛みはない。
花村が撃った弾ではなかった。
「ぐっ……。」
花村の太股に食い込んだ弾丸。
ダラダラと赤黒い血を流している。
「花村ァ……。」
弾を撃った男の口からゆっくりと吐き出される唸るような低い声。
皆がそちらを向いた。
「紅の狂犬……。」
藤堂が呟いた。
「宗次郎……誰に向かって――」
パァンッ―――
再び銃声が鳴り響く。
今度は左肩に弾丸が食い込んだ。
「誰?そんなもの忘れた……。」
瞳孔が開ききった宗次郎の目がジッと花村を見ている。
獲物を見つけた獣の如く、牙を剥き出しにして。
いつものような冷静さは微塵もない。