第10章 喧嘩王子
朝。
カチッ―――ボッ……
ユラユラと揺れる炎に近付ける煙草の先端。
ジワジワと侵食していく熱い火。
そこから出される煙をフィルター越しに吸い込むのではなく、フィルターを折った部分から吸い上げる。
この方が気持ちよく煙を吸い込む事が出来る。
まるで葉巻(はまき)のような感覚。
フーッ
煙を一気に吐き出した。
黒の学ランを着た男は今、駅の広場の前でジッと座っている。
学ランには中学の校章がつけてあり、龍の刺繍が背中にほどこされている。
銀髪の髪をユラユラと揺らし、ジッと眺める人の群れ。
別に目的はない。
しいていうなら暇潰し。
また、煙を吐き出した。
「…あぶねぇからよ。」
「そうだね。」
聞こえてくるカップルの笑い声。
少年はふと目を向けた。
赤い髪の目付きの悪い男に綺麗な顔をした可愛い女。
まるで"美女と野獣"だ。
と鼻で笑う。
ふと赤い髪の男と目があった。
睨みあう二人。
女もチラリと此方を見た。
何故かニコッと笑っている。
「………。」
少年はまた鼻で笑うと、腰を上げて歩き出した。