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〇〇系男子

第1章 草食系男子


クスクス

どこからか、笑い声が聞こえた気がした。

「ふふ、きょうミナトなかなかグイグイ来るね」
「そう?千尋の真似、のつもり」

私は「そんな?」と一言笑い、彼の腕を掴んでグイっと引き寄せると「ご飯食べるぞ!」と言って歩き出した。

「千尋はいつも強引、ていうか食いしん坊」
「強引なのは認めるし食いしん坊でもいいけど、ミナトも大して変わらないから!」

そう言ってまた笑って。

食事が運ばれてくると向かい合わせに座って、なんだか夫婦で旅行に来たみたい。

「なんか夫婦みたいだよね、温泉に旅行なんて。」

あ、ミナトも同じこと思ってた。
嬉しくなって照れくさくなりながら相槌を打つ。



「あーんってしてやろうか、あーんって」

冗談交じりにそう言ってみる。
自分もちょっと恥ずかしくなったし、ミナトもあんまり好きじゃない。だけど私は強引だから。

「......今日だけね?」


ほら、やっぱり今日は積極的。
すこし嫌な顔をしたけれど、承諾してくれたミナトに心躍る。


ミナトは口を開けた。
そこに私が箸で掴んでいるオカズを差し出した。

「あーん...」

お互いの口からそんな言葉が漏れた。


ミナトはもぐもぐと味わったあとゴクリと飲み込んだ。
そのすがたをジッと見ていた私をミナトは見て、クスリと笑った。

「なにそのアホ面。
 もうしてやんないんだからね」







彼はたまーに愛してくれているか不安になるけれど、なんだかんだで楽しい。
添い寝ばっかりだけど、すっごく安心する。



「知ってますよー」



こんな彼も、いいかもしれない。

ああ、でも今日限りか。


「あ、今日はお互い強引なんだったね。
ほれ、千尋あーんは?」






                 _Fin_

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