第3章 ハイエナ系男子
家についても彼女は何も言わず、ただ僕についてくるだけ。
「荷物、ここでいい?」
大きめのバッグを下におろす。
「ねぇ」
また、彼女は声を発した。
「私のこと、好き?」
好き。
ずっと前から。
でも、どうして君は今、そんなことを聞いてくるのさ。
君は僕を好きじゃないくせに。
「好きだよ。ずっと前からね。」
「うん」
ぐっと距離が詰まった。
「キスしてよ。私を愛してよ。」
好きでもない相手に愛されたいの?キスされたいの?
そんな甘え、ダメなんじゃないの?
ああ、可哀想。
って思って欲しいの?
でも、僕、それでもいいと思うんだ。
千尋に求められればそれでいい。
甘い僕は許してあげる。
ぐっと彼女を引き寄せて、彼女にくちづけをする。
僕の愛のある行為を。
僕だけが愛のある行為を。
いつか彼女は僕のことを好きになる。
そんなことないんだ。
長く付き合ったものは逆に恋愛に発展することは少ないんだって。
千尋は、寂しさを埋めるということを。
僕は、伝えても叶わぬ愛を。
からっぽの行為に委ねたんだ。