第7章 これが恋。[ドルイット]
カーン
カーン
今日は私の結婚式。
真っ白なチャペルで
真っ白なウェディングドレスを着て
好きでもない
男と結ばれる。
父と母が心配そうに
見守るなか、
私は、この男の妻を
演じきった。
男の名は
リアン・ストーカー
医者である彼に私を嫁がせ
経営困難である
私の家をなんとか
持ち直すという意味での
政略結婚だった。
兄はどこかの
町娘と駆け落ちをして
出ていったきりだ。
結婚式には
私の友人やら親戚は
ほとんどいなかった。
彼の友人達ばかりだった。
そのなかでも一際目立っている男がいた。
それが、ドルイット子爵。
これが、彼との出会いだった。
結婚式が無事終わり
宴会となった。
テーブルに沢山の料理が置かれ
美味しいお酒に美味しいスイーツ
どれも私好みであった。
私が言ったわけではない。
彼が私のことを
なんでも知りたがり、
何でも覚えているだけだ。
これが、愛なのか何なのか分からないが
少し気味の悪いところではあった。
彼の横で沢山の貴族達と
お話しなければならなかった。
にこにこ笑いながら
彼と組んでいる腕も
抱かれている腰も
振り払って逃げ出したかった。
誰か私を連れ出して……
そう、心で叫び続けていた。
**
「おぉー、
なんと美しき姫君。
私と一緒に踊ってくださいませんか?」
リアンが横にいるというのに
そう言ってひざまずいて
私の手の甲にキスを落とすのは
先ほどの
アレイスト・チェンバー
通称ドルイット子爵、
であった。
『へっ…?//』
突然の出来事に
驚く私と
「ドルイット子爵!!!??
彼女は私の妻ですよ!?」
と、少し不機嫌になる
リアン。