第3章 男と女[グレル]
小さい頃、
幼稚園で
お昼寝をすると、
朝まで記憶がなかった。
次の日幼稚園にいくと
女の子にはモテたが、
男の子には嫌われた。
物心ついた頃から
何故か私のまわりには
男性がいなかった。
使用人も女性しかいなかった。
幼稚園の頃の経験からか
自分から男性を避けるようになった。
学校も女子校で、
男性教師のいない学校を選んだ。
私は男性という生き物を
物語や本でしか知ることができなかった。
しかも、
使用人にも友達にも
とにかく女性にはモテた。
父と母を早くに
亡くしていたから
メイドたちが
大事にしてくれるのだと思っていた。
あの日までは。
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『ばぁや!!
どういうこと?
さっき、使用人達が
話しているのを聞いたわ。』
執事室
この屋敷の使用人たちの
長である ばぁやを
私は責めていた。
「お嬢様…、
盗み聞きなど
はしたないですよ。
それに、これは
もう決まったことです。」
『なんで、
今まで私がどれだけ
頑張ってきたと……』
「お言葉ですが、お嬢様。
学校ももうすぐ卒業。
これからは
立派な貴族令嬢として
社交の場に
出席しなければなりません。
今のあなたでは
そのようなことは
かないません。」
ばぁやの正論に
ぐっと引き下がりそうになる。
『でも、ひどいじゃない。
急に執事を
ばぁやから
見知らぬ男性に変えるなんて…』
そう、ばぁやは
明日から
自分ではなくその男性に
執事をやらすというのだ。
そんな急な話、
のれるわけがなかった。
また自分が傷つくのが
怖かったからだ。