第10章 勝てない[アグニ]
静まり返った夜
そこは
ベンガル藩王国の城の
使用人に与えられた
小さな部屋。
『っーっ!!////
んっっっ!!///』
ギシギシと
ベッドがきしむ音と、
口を無理矢理塞がれて
叫ぶこともできない女。
「くっ…ハ…ッ、ソ…マさま…っ!!!!////」
その女を
想い人の変わりに
犯す男。
女の名を。
男の名をアグニと言った。
どうしてこんなことに、なってるの…?
女はきしむベッドのシーツを
ぼやっと見つめながら
今日のことを思い出していた。
**
「ソーマ様…お履き物を温めておきました。
どうぞ…///」
『…(アグニさんは、本当にソーマ様がだいすきだなぁ…)』
私はこのソーマ様の世話係補助として
横でぽつーんとたっている。
働けって?、
働くことないんだから、
仕方ないじゃない。
こんな私にも
いつもアグニさんは
笑顔で仕事を与えてくれる。
できるだけ、
負担の少ないもの。
例えば、
ティータイムのカップ選び、
ベッドのシーツの洗濯
ディナーのワゴン運びなど、
決定的に
ソーマ様と関わる
責任のある仕事は
全てアグニさんが引き受けてくれてる。
…そう思っていた。
思い上がっていた私は
ソーマ様が何やら学校へ行くとなって
しばらく屋敷に戻られなかった時、
ソワソワするアグニさんに
聞いた。
いや、聞いてしまった。
『アグニさんは、
ソーマ様のことが
本当にお好きなのですね?』
アグニさんは、少し眉をピクッと動かして
「ええ。
私の神…ですから。」
『いいですねぇ。
私もそんな風に
人を愛したい…
ひとまず、
ソーマ様を神的に愛しますねっ!!』
グッと拳を握った私を
アグニさんが冷ややかな目で見ていたことに
私は気づかなかった。