第2章 王子サマ[ソーマ]
「…あの方がソーマ様よ。
くれぐれも失礼のないようにね。」
『うん!…分かった!』
いつの日か母が
庭で遊ぶソーマ様を見ながら
言っていた。
私はソーマ様と同い年だったからか
物心ついた頃には
いつも近くで笑っていた。
まるで兄妹のように。
でも、私達は成長して、
身分というしがらみに
とらわれることになった。
それから私のソーマ様への気持ちが
どういうものなのか、
はっきりと分かってしまうことになった。
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『ソ、ソーマ様っ!!
お待ちくださいっ!!』
「うるさい!
お前に止められても
俺は行く!!
それに、お前はいつから
敬語になったんだよ!!」
最近、英国人に連れ去られた
ミーナという侍女を連れ戻すため
英国へ行くと言い張るソーマ様を
なんとかお止めしようと
踏ん張る私。
だけど、
結局強くは言うことができない。
『そ、それは
仕方ないんです!!
貴方と私は王子と侍女。
昔、敬語を使わなかった粗相は
お詫びしますが、
今はそのようなことは
できないのです!
そんなことより、』
話をそらそうとするソーマ様に対して
話を戻す私。
「あぁもう!!
何で止めるんだよ!?
ミーナは俺の大切なヒト
なんだぞ!?」
その言葉に
はち切れそうになる心を
ぐっと押さえつけて
『それでも、
ソーマ様に何かあったら……』
と本音を言う。
ソーマ様にはアグニ様がついてる。
けど、それでも
万が一なにかあったらと思うと
どうしても
反対せずにはいられなかった。