第8章 白い人[アッシュ]
『んーっ、今日もいい朝…』
朝陽が少し出始めて
外が明るくなってきた頃
体を起こして
伸びをする彼女はさん。
ロンドンの外れにある
小さな集落に住む
町娘です。
今日も鏡の前にたち
プラチナブロンドの髪を結って
赤いリボンのついたネットをかぶせる。
『よしっ、
今日も働きますかっ、』
集落に一つしかない
パン屋でいそいそと働いています。
彼女は真っ白な人です。
私、アッシュが
彼女の存在に気づいたのは
彼女が3才のときでした。
**
『~♪』
いつも何処からか聞こえてくる
このオルゴールを
口ずさんだ3才の子供を
両親は
たくさん褒めました。
彼女は
両親に褒められて
すくすくと美しく成長しました。
動物、植物、もちろん人間も。
彼女は全ての物を愛しています。
当然、動物、植物、もちろん人間も
全ての物が彼女を愛しています。
けど、彼女の両親は
愛される存在ではなかったのです。
彼女が6才のとき。
経営が厳しく、
子供を育てられるお金のなかった彼らは
あろうことか彼女を殺そうとしたのです。
それを見ていた私は。
「ひぃぃっ、お許しください…
どうか、神のご加護を!!」
泣きすがる彼らを
浄化して差し上げました。
彼女は
炎の上がる自分の家を見て
『お母さま…お父さま…』
と言って涙を一粒流しました。
それは美しい涙でした。
彼女の涙はこの町の大地を
潤しました。
朽ち果てていた土地は
昔のような潤いを取り戻し、
草木は驚くほど芽生えました。
彼女に元気になってくれと
言わんばかりに
森が、草木が、小鳥たちが
生き生きとしだしたのです。
私はずっと彼女を見ていました。
そして、元気を取り戻した彼女は
両親と同じパン屋を開くことにしたのです。