【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第1章 Vuelie 〜語り継がれる愛〜
「リヴァイ!」
夜明け前の静まり返った城。
「早く早く!」
折々に舞踏会が開かれるダンスホールへと続く階段。
200人は収容できようかという広い空間に、楽しそうな声が響く。
「朝になっちゃうよ」
「お前、さっきはお空も起きてるって言ってたじゃないか」
小さな手に引っ張られながら、リヴァイはため息を吐いた。
叩き起こされた時は不機嫌だったが、今はもうすっかりと目が覚めている。
「魔法を見せて!」
階段を降りると、もう待ちきれなくなったのかレオノアがリヴァイに抱きついた。
“ 魔法をむやみに使ってはいけない ”
父王の言いつけが一瞬、頭をよぎる。
しかし、無邪気な笑顔で自分を見上げてくる妹をがっかりさせたくない。
ここには誰もいないし、ほんの少しならいいだろう。
誰も起きて来ないことを祈りつつ、リヴァイはそっとレオノアの頭を撫でた。
「見てろよ」
右手を妹の顔の前に差し出し、親指と人差し指を軽く擦り合わせると、キラキラとした氷の結晶が現れる。
さらに空気を撫でるように手を動かすと、泉のように細かい氷が湧き上がった。
「わぁ・・・!」
一瞬にして、レオノアの頰を冷たい空気が撫でる。
暖かい季節のはずなのに、ダンスホールに冷気が立ち込め始めた。
「すてき・・・!」
嬉しそうな妹をもっと喜ばせたくて、リヴァイは一歩下がると両手を高く掲げた。
すると弾けるような音が響き、まるで噴水のように雪が吹き上がる。
「すごい!!」
輝く氷の粒の間を走り回りながら、レオノアが歓声を上げた。
兄のこの不思議な力を知っているのは、家族と城の中で働く召使だけ。
両親は使うことを禁じているが、彼女にとっては不思議な楽しい魔法だ。
輝く氷の結晶の中を、白いドレスの裾を翻しながらはしゃぐ。
そんなレオノアの姿を見るのは、リヴァイにとっても嬉しいことだった。
だから、いけないこととは知っていながら、両親の目を盗んでは力を使ってみせていた。