【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第3章 In Summer
トントトトントン
リヴァイにとって、一日に一回聞こえるドアをノックする音は、唯一の慰めだった。
たとえ会話することはなくとも、その日あった出来事を報告しに、レオノアはリヴァイの部屋までやってくる。
そして、時折、可愛らしい土産を部屋の前に置いていく。
一輪挿しにさした、水仙。
少し焦げたパイ。
ヘビの抜け殻。
どれもレオノアが持ってきてくれたものだ。
他にも、庭で見つけたという碧い小石。
王に褒められたという王妃の似顔絵。
一番上手に書けたという筆記体の文書。
リヴァイの部屋の戸棚はいつしか、レオノアが持ってきたもので埋め尽くされていた。
どれも他愛ないものだが、その一つ一つに触れれば、季節を感じることができる。
愛する妹や、家族の息遣いが聞こえる。
リヴァイにとっては宝物に等しかった。
何より、レオノアが自分の存在を忘れず、こうして毎日部屋に来てくれることが嬉しい。
トントトトントン
毎日欠かさず聞こえる、ノックの音。
孤独な王子は、それだけで十分だった。