【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第1章 Vuelie 〜語り継がれる愛〜
夜明け前の、大気が最も冷える時間。
男達は湖から氷を切り出すため、山に入る。
鉄釘を打ち付けられた蹄で、氷道を踏みしめるトナカイ。
険しい山道でソリを引いて進む。
石炭や鉄、絹、香料などとともに、大事な資源として取引される氷。
“アイスマン”と呼ばれる屈強な男達は、大きなノコギリを担いで湖を目指した。
その列の最終尾に、過酷な仕事とは不釣り合いな少年と少女の姿があった。
「うわ!」
動物の皮をなめした靴を履いていても、凍った湖の上を歩くのは難しい。
転びそうになった少年の腕を少女が掴んだ。
「気をつけて」
「うるせぇな、わかってるよ」
少年と同じ背丈の、赤いマフラーを巻いた少女。
体を支えていた手を振り払われ、申し訳なさそうに俯く。
少年の名はエレン。
少女の名はミカサ。
容姿を見れば、二人に血の繋がりのないことは一目瞭然。
しかし、まるで兄弟のように寄り添いながら生きていた。
「最近、身長が伸びて靴が合わなくなってきてるんだよ」
「でも、私と目線は変わらない」
「お前なぁ、いつも一言多いぞ」
「・・・ごめん」
エレンは緑色の大きな瞳が印象的な、整った顔立ちをしていた。
寒さで鼻の頭を赤くしながら、自分よりも大きなツルハシを担いでいる。
そのエレンが再び転びそうになっているのを心配そうに見つめるミカサは、異国の血が混じった美しい少女。
そして彼女もまた、大きな氷バサミを担いでいた。
二人は幼いながらも、立派なアイスマンだった。