第5章 松本潤の場合。
「……え!?」
私のバカみたいな声に、松本くんがあはは、と笑う。よく、笑う子だ。…なんだろう、松本くんに笑われるのは、嫌じゃない。
「うん、そう、その反応。もっと自分に期待しなよ。折角いい女なんだから。」
「あ!?…え、うん、」
やっぱり…そういうことか、松本くんは私に気があるわけじゃない。私の反応で楽しんでる、…悪い子。
こんなおばさん、恋愛対象なわけ、
「本気だよ。」
「……は、い?」
まっすぐ私を見る大きな目から視線が離せない。
「好きだよさんのこと。」
「……はい?」
………、
……………、
これはなに…?悪戯?ドッキリ?
ま、さか…カメラ、あんじゃないの?私がタクシーの中をキョロキョロ覗いたせいか、松本くんが私の手首を掴んだ。
「…対等に見てほしいって色々頑張ってんのに、こっちは。」
その照れたような、ふてくされた顔、少し視線を私から外す姿が、決して嘘を言っている顔ではなくて、本気で言ってくれていることに気づく。
「う、……うえええぇえ!?」
私の反応に、松本くんがニヤリと笑った。
「…まあ、そういうこと。じゃあね、もう言ったからには俺、何がなんでもさんを物にするから。」
「………、」
その宣言に驚きすぎて開いた口が塞がらない。
「知ってるよね?俺の性格。」
「…い、や、あの、」
知らないとは、言えません。
「覚悟してね、さん。」
またニヒルな顔で笑う松本くんに胸の鼓動が早くなる。これは何…?驚き?久しぶりの恋沙汰だから?
それとも……松本くんだから?
私はこの胸のリズムの答えがわからない。
松本くんの下剋上はまだ始まったばかりで、これから先の攻撃はこんな生ぬるいものじゃなかった。この時の私はそれを知る由もなく。
それはまた
別のお話。
『 で、言いたいことはそれだけ? 』END.