第5章 松本潤の場合。
家の前につき、タクシーから降りると、なぜか1度松本くんも降りた。
「…あ、今日はご馳走になりました。」
食事代も、タクシー代も「女性からお金は受け取れない」と断られた。なんともまあ、松本くんらしいというか、久しぶりに女性扱いしてくれて浮かれている自分がいた。
しかし歳上女の扱いに慣れていると思うと、この扱いが自分だけじゃないこともわかる。松本くんの優しさも素直に受け取れない、可愛くない年齢になってしまった。女ってやっぱり若い方が可愛いな。
松本くんがさっきとは違う、スッキリした顔で
「ん、こっちこそ付き合ってくれてありがとう。さんとプライベートで飯は初めてじゃない?」
「そうだね、違う一面も見れた。」
「え?俺なんか違った?」
「うん、なんか違った。やっぱり年下なんだなあ、って。」
松本くんの可愛い姿を思い出して、つい笑ってしまった。現場じゃあんな姿見れない。
「それ、やだ。」
松本くんが拗ねたように口を尖らせる。その姿にまた笑いがでる、というよりも、微笑んでしまう。
「ふふ、そういうのだよ。可愛い。」
「やっぱり男はかっこよくて頼れるのがいい?」
「…え!?いやあ、どうかな、そんなの久しく考えてないからわかんないや。」
そう言うと、松本くんは声を出して笑った。
「なんだろうねさんって。恋愛話とか似合わない。」
「ちょっと、どういう意味よ。」
「素敵だって言ってんだよ。」
松本くんが優しい、大人の視線を私に向ける。その顔は暗闇に溶け込んで少しボヤけているけど、それでも破壊力は抜群で。不覚にも年下男子にドギマギしてしまう。
「へ、…へ?」
「俺はさんみたいな人、好きだよ。」