第1章 大野智の場合。
「…………」
黙ったまま私をジッと見る彼に、遅かったと後悔した。これじゃあ、1人でニヤつく気持ち悪い女。
「びっくりした」
「あ、や、…気持ち悪いよね」
はは、と渇いた笑いが出た。
「え?なにが?」
「え?ニヤニヤしたのに驚いたんで しょ?」
大野くんが首を傾げる。
「オイラなんていっつもニヤニヤしてる」
「あはは、そう、なの?」
だとしたら彼は何に驚いたんだろう、その疑問が頭をよぎった。
「うん、それか口が開いてる」
「あはは、うんわかる、かも!」
「ひっでぇな、ってそうじゃなくて、」