第5章 松本潤の場合。
しかし嵐は女性のスタッフに対して、恋愛感情などを出さず(プロとして当たり前だが)対等に接してくれるから、スタッフにも人気があるんだろうなと、ここ何年かの彼らをみて思った。
「・・・なんかさ、嵐ってなんていうか、」
「なに。」
「やりやすい。」
「ふうん、すげえ嬉しいね、それ。」
嬉しいね、とニヒルな笑みを浮かべる松本くんの表情は私をターミネーターと言った時と全く変わらない。ほんとに嬉しいんだろうか。君こそターミネーターじゃないの?というのは置いといて、それより先に腹ごしらえ。腹が減っては戦はできぬ。
「うん、飯行こう。」
私が松本くんにそう言うと
「そういうさんもやりやすいよ。」と笑って言われたので
「へえ、ケンカばっかなのに?」とわざと意地悪を言ってみた。
「あれはケンカじゃないっしょ。ああいう時のさんとの言い合いは仕事だよ。」
ふむ、2つ下にしてはしっかりしてる、と関心した。
「私みたいな正反対の人間がいると、やりにくいでしょ。」
「は?あんた何言ってんの。俺はやりやすいって言ってるの。」
「や、でもこうやって顔合わせるたび言い合いって…」
「わかってねえなあ、」
む、私が何をわかってないって言うのよ。もしかしたら、顔にそれが出たのかもしれない。松本くんが呆れたように笑った。
「同じだからぶつかるんでしょ?俺ら。」
「え、」
「仕事に妥協が出来なくて、頑固で、でも誰よりも良いものを作りたいって気持ちはもってるつもりで。」
「…ああ、なるほど。」
「だから俺が一番さんの気持ちわかるし、俺を一番わかってくれてるのはさんだって思ってるけど。」
「頑張ってる君が、素敵だよ。」なんてゲームの中の言葉より、「信頼してる」の意味に取れるソレは、仕事第一の私にとって驚くほど嬉しかった。