第5章 松本潤の場合。
嵐のライブのケータリングは凄く美味しい。いろんなコンサートのプロデュースに関わらせてもらったが、こんなに美味しいのは今までない!てくらい美味しい。
「うま!」
トロットロに溶けた牛肉が入った、ビーフシチューを口に含み、落ちそうな頬を左手で抑える。これこそ私の生きがい。私の趣味は仕事と食、それしかない。
「まじ?俺もビーフシチュー入れれば良かった。」
「ん、はい、いいお、ひほふひ(いいよ、一口)」
自分のお皿を松本くんに差し出す。
「やり、んじゃこれやる。」
松本くんも自分のお皿を私に渡した。
「わっ、ローストびーふ!なんて贅沢。はあ、幸せ。」
また独り言が大きすぎて、松本くんが表情を変えずに上目使いで嫌味を言う。
「さんに彼氏ができないの、なんとなくわかる気がする。」
「ておい、なにそれ。」
なんて失礼な人なの。ものっ凄く余計なお世話だ。ビーフシチューを口に入れた松本くんが悪びれもなく「うっわ、うめえ、」と大きな目を見開いてお皿の中を見る。
すると隣からの熱い視線に気づいた。
「なに、溝内くん。溝内くんも食べたいの?」
ADの溝内くんが私の隣に座って、じっとローストビーフを見ていたので、松本くんのお皿を差し出した。
「あ、いや、・・・お二人って付き合ってましたっけ?」
「んあ?」「はい?」
私と松本くんがほぼ同時に発言する。
「あ、いえ、・・・なんでもないっす!」
松本くんと目が合う。私も、松本くんも「どういうこと?」と、気の抜けた顔をしていた。