第5章 松本潤の場合。
「・・・ふふっ、さんこっわ。」
と敵が笑う。
「わ、笑った!?」
「あ、ごめんなさい。そうね、俺が悪かった、」
「そうそう、そっちが・・・・・・ええ!?」
案外素直に謝ってくる敵に、たじろいだ。今日はなんだか調子が狂う。
「ど、どうしたの、まつもっさん。」
「そのまつもっさん、やめれ。おやじか。」
「あ、え、っと、」
「さん、ちょっと休憩とろう。俺もっかい考えたい。」
「・・・う、ん。了解。」
そう言ってかぶっていたニット帽を脱ぎ、ワシャワシャと真っ黒な髪をかいて私に背を向けた。
お互い譲れない部分が多いと、こうなる。私も、松本くんが納得するいい案を考えないと。
耳につけたスタッフと連絡を取る様のイヤモニに手をかけた。
「すみません、1時間の休憩を挟みましょう。」
耳の奥で「了解です。」というADの声が返ってくる。
「みなさーん、1時間の休憩挟みまーす!」とマイクでライブ会場に広がる。途端にお腹がキュルル、となるのがわかった。さっきまでお腹がす空いたなんて思わなかったのに。私、結構神経が図太いみたい。
「人間なんだ、空くもんは空く。」と自分に言うと
「それどんな独り言?」と急に突っ込まれた。