第5章 松本潤の場合。
6年前、アイドルグループ、嵐のライブ構成に参加して欲しいと依頼を受けた。それから7年、ライブの度にこうして松本くんとは熱いバトルが繰り広げられる。
「んで、昨日の件は?」
松本くんが切り出す。さすがに私も昨日はやり過ぎたと、帰り道反省して、夜に徹夜でいくつか案を考えた。でもそれには松本くんの協力も必要で、やっぱりお互いの意見を100%取り入れるには無理があった。
「うん、考えたんだけど、やっぱり間に合わない。ここで、20秒使うなら、もう少しここの間を詰めてくれないと、」
「無理。」
私がまだ言葉をいい終える前に松本くんが否定する。
・・・イラ、っとハッキリ頭の中で浮かんだが、ソレをかき消すように続けた。ダメ、ダメよ、落ち着いて、彼も仕事人よ。これは彼らのライブ、まずは彼らの意見を尊重しなきゃ☆
…なんて、語尾にわざと星をつけなければやってらんない。
「・・・じゃ、じゃあさ、ここは?この感想を3コンマずつずらして、ほんの少しだけテンポアップさせたら・・・うん、バッチリ!間に合うよ!うん、よかった、よかった!」
松本くんの意見も聞かずに話を終わらせようとしたが、無駄だった。松本くんにそんな子供だまし、きくわけない。
「さんさあ、あんた何年俺らといんの。それじゃあ曲の雰囲気台無しじゃん。やる気あんの?」
そう言うと冷めた視線をこちらに向ける。
こぉんのっ・・・くっそガキがぁ・・・・!!
「・・あのさ、やる気あるの?はそっちじゃない?」
「は?」
「提案しては無理、なんの進展のない会話、文句だけ並べてなにか自分の答えがあんならもってこい!じゃなきゃ、討論にならない!」
はあ、はあ、と息が切れる。もう私も若くないんだな、なんて仕事中なのに、年齢を気にする女の部分が出た。