第4章 二宮和也の場合。
冗談を言っている雰囲気ではないカズに、ひろちゃんが問いかける。
「・・・和也、お前言っている意味わかっているのか。」
「はい。」
敬語なんて使わないカズが、そう答える。その声はもう震えてなんかいない。
ひろちゃんの視線が私に向く。
「・・・も、同じなのか。」
「・・・はい、」
私の答えに、お母さんの顔が歪む。今にも泣きそうな顔に、胸がギシギシ鳴った。
ひろちゃんがハア、と大きくため息をつく。
「・・・いつから、なんだ。」
「自分の気持ちに気づいたのは、中学の半ばだった。ただの家族好きかと思ったけど、高校になって違うって気付いた。・・・抑えきれなくなって、初めてに気持ちを伝えた。」
「・・・そんなに前から」
お母さんがそう言って口を抑えると、左の目からポロっと涙が流れた。
ずっと騙してたの?と言われているようだった。
「・・・ごめん、なさい。」
泣かない、泣いちゃダメ。辛いのは私じゃない。
カズがそれを聞いて私を庇うように口を開いた。
「俺が悪いんだ、それからはやっぱり自分の気持ちはいけないものなんだって、そう思って押し込めた。だから家も出た。忘れようと思った。は何も言わなかったけど、それをわかってくれようとした。姉弟のままでいようとしてくれた。」
カズの言葉にどんどん力が入る。
「でも昨日、久しぶりに会って、やっぱり自分の中に消えていない気持ちに気付いた。
二人で話して決めたんだ、このまま、黙ったままはいけないって。軽蔑されても、家族の縁を切られても、父ちゃんと母ちゃんだけには・・・嘘をつけない。
・・・ごめん、勝手な気持ちで2人を傷つけて・・・。ごめん、こ、んなっ、息子で・・・」
カズの声にならない声を初めて聞いた。