第4章 二宮和也の場合。
石川君の顔が私に近づく。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
目を閉じると、唇に柔らかい感触があって、目をゆっくり開けると、もうお互いの睫毛が当たりそうなくらいすぐ傍に、真剣な顔をした石川君がいた。
男の人と初めてのキス。
「・・・、俺・・・」
気づくと私は天井を見ていて、石川君が私の上に乗っていて、このドキドキするような状況を私は何故か冷静に頭の中で分析していた。
「・・・いい、の?」
「・・・・・・、」
いいの、かな。わからない。そんなこと、言えない。
「・・・、」
石川君が私の返事を待たずに首筋にキスをしていく。もっと、心臓が飛び跳ねたり、恥ずかしくて顔が見れなくなったりするのかと思ったのに。なんだか変だ。
私の初めて、こんな風に始まっていいのかな。何事もなく終わって、それでいいのかな。
目をつむってみると
『石川君にが取られるの、すげぇやだ。』
カズの言葉と、カズの泣きそうな顔と、カズの匂いが、瞼の裏に蘇る。
「・・・ま、まって!」
急に耐え切れなくなって、つい石川君を払い除けてしまった。
「・・・ご、ごめん、」
「・・・・・・、」
「・・・ま、まだ...心の準備が出来てないっていう、か・・・」
怖くて、石川君の顔が見れなかった。
「・・・・・・、だ、よな。ごめん、俺焦って・・・。」
「・・・うんん、ほんとに、ごめん、なさい。」
「謝るなよ、さっ、旅行の話、決めようぜ。」
石川君に触れられているのに、頭の中は震えた声のカズばかりで、なんだか罪悪感しかなかった。
この罪悪感は、誰に向けたものなんだろう。
答えを知るのが怖かった。