第4章 二宮和也の場合。
「カズ、」
「………」
「和也くーん!」
「なによ。」
「なによって、なんで私の部屋にいるの?」
「は?あんたの彼氏が来るつーからでしょうが。」
「やっ、だからっ何故。」
今日は大学生になって初めて出来た彼氏、石川君が私の部屋に来てくれる。せっかくのおうちデート!何か起こるかもしれないデート!なのに、弟が私の部屋に入り浸ってます。
制服姿のまま私のベッドで足を伸ばし、ペラペラ雑誌をめくるカズ。
「、男がね、女の子の家に上がるって意味、わかってんの?」
「じゃない!お・ね・え・ちゃ・ん!」
「ふふ、そこかよ、ばか。」
「ば、はか!私、あなたの3個上なんだけど!」
「でた、ばか丸出し。」
カズは高校になって突然生意気感がパワーアップした。今では私のこと呼び捨てときた。・・・可愛くない。昔はあんなに素直…でもないか。カズの生意気さは今に始まったことじゃない。
はあ、と大きなため息をわざとついてみせた。
「カズ、私もう大学生だよ?そりゃ大人の女にもなるよ。」
「なにそれ、期待してるってこと?」
「…き、期待っていうか、まあ、流れっていうか、そうなってもおかしくはないっていうか…」
私がモゴモゴしていると、冷たかった弟の声変わり益々冷たくなった。
「そんな隙あるとヤられるよ?」
「や、やられるって!な、何言っちゃってんの!」
「…、まさか19にもなって、まだなわけ?」
右の口角をあげ、ニヤッ笑い私を見る弟の目がやけに色っぽくて唾を飲んだ。・・・高2くせに、生意気!
「…か、カズには関係ない、」
「ばか、あるっつーの。」
「なんで今日そんな意地悪なの、」
「がばかだから。」
「ばかじゃないもん。」
「ふふ、ばかだよ。」
私は言い返すのに精一杯なのに、弟は笑えるくらいまだ余裕があって。それが悔しくて悔しくて悔しくて。ぼやけた視界で睨んでやった。
するとカズは肩を下げ、はあ、と一息つくと
「…怒んないでよ。」とかすれた声で呟いた。