第4章 二宮和也の場合。
さっきまで威勢の良かったカズの声が弱くなった。よくわからなくて、眉を寄せてカズを見ると、目尻に溜まった涙が一滴溢れた。
向い合わせになってベッドの上であぐらをかくカズが、辛そうな顔をして親指で私のソレを拭ってくれる。
「ごめん、意地悪して。」
なんてさっきとは正反対の態度で優しい声を出すから驚いて怒った気持ちが飛んでいってしまう。
「・・・ううん、」
なんだろう、カズが悪いはずなのに、まるで私が悪いみたいに、胸が痛い。
元気なさそうに眉を下げてわざと目を細めて笑うカズの表情に、また胸が締め付けられる。
「ちょっと、肩、貸して?」
そう言って、おデコを私の肩につけると、カズの体重が少しかかる。すぐそばにある黒い髪の毛から、シャンプーのいい香りがした。
「・・・カズ?」
泣いてるの?
私の呼びかけには答えず、少し黙ったあとカズが口を開いた。
「は石川君のこと好きなの?」
そう聞かれてすぐにうん、と返事が出来なかった。なんでかは、わからないけど。