第3章 相葉雅紀の場合。
セミの鳴き声がこの蒸し暑い空気をより一層嫌なものにする。長い階段を上がり、綾人のお墓が見えると、そこには見覚えのある人の姿。
なんでいるの?相葉くん。
「相葉くん、」
私の声に相葉くんがこちらを向いた。その顔はなんだか悲しそうだった。
「来て、たんだ。」
「うん、急に仕事のめどがついて。」
「・・・言ってくれれば良かったのに。」
「うん、もう遅いかなって。」
やっぱり変だ。いつもの相葉くんじゃないせいで、私まで妙に緊張している。
「相葉くん。」
「ん?」
「私、何かしたかな。」
私が悪かったなら言って欲しい。相葉くんとこんな、こんなぎこちないやり取り、なんだか胸が痛い。
「え!なんで!」
私の発言に相葉くんの目が丸くなる。
「・・・だって、おかしいよ。こんな、避けるみたいにっ・・・」
声が震える。
相葉くんも、また私から離れていっちゃうのかな。