第2章 櫻井翔の場合。
「そんな素直なにはこれをあげます」
彼が私の左手を両手で包んだ。
手を握ると何か固いものが手の中にあることに気付いた。
ゆっくり手を開くとそこには私が欲しかったもの。
「なあんて、偉そうに言っちゃったけど
俺がに渡したかった」
手の中でコロッと転がるゴールドのソレは
「一応、だい、2…ボタンっていう
やつなんだけど…」
「…………」
彼が黙ったままの私を見て慌て始める。
「ってはずい!やっぱ返して!
いらないなら返して!」
顔を真っ赤にした彼が私からボタンを奪おうとする。
「や、やだ!いる!返さない!わ、たしの!」
そう言うと彼の動きがピタっと止まった。
「…い、るの?」
「…うん、いる」
「…ほんとに?」
「…っうん…一番欲しかった、から」
抑えきれなくなった涙がポロっと流れると、彼がそれを拭ってくれた。
「…、もしかして俺、
伝えるの遅かった?」
「……うん、遅いよどんかん」
「…ふふ、まじかよぉ。はははっ」
少し見つめあうと、涙でぼやける彼の顔が近づく。
これは…友達じゃないテリトリー。私が近付きたかったその場所で、一番聞きたかった言葉をくれた。
「…ずっと好きだった、」
「………」
「…これからも俺の傍で笑ってくれない?」
それは今までの関係から1つ近づく関係。
「…うん、いっぱい笑ってあげる」
「えっ、らそぉー!」
あはは、と彼がいつものように笑うと、私たちは初めてのキスをした。
卒業式、ここから私たちは始まって。
『 ボタンの行方 』END.