第2章 櫻井翔の場合。
「翔くん、大学どう?」
「ん、楽しいよ?」
「ふぅ~ん」
「え?なに」
と彼が笑う。
この笑いは私のことをわかっている時だ。くやしい。
「寂しいんでしょ?」
と、後ろにふふふ、と含み笑いを添えた。
寂しいわ!くっそ寂しいわ!彼は授業やらサークルやらバイトで忙しい毎日。会える日なんて、正直あんまりない。なんて、そんな贅沢言ってられないか。
やっとこうして特別な存在になれたんだ。
「…うん、寂しいけど、大丈夫!」
とニッコリ笑って見せると、彼が優しく笑ってくれた。
「なぁーんか、俺が寂しい」
「え?」
「素直な、好きだけど、
ちょっと今我慢したでしょ?」
「う、」
「いい子になんて、ならなくていいよ」
「え、」
「もうずっと一緒にいるんだから、
今更わがまま言ったって嫌いになれないし、
俺、あまのじゃくでもわかりやすい
が大好きだよ?」
「…しょ、翔くん…激甘だね…」
「うん、俺我慢してたからね、今まで」
「そうなの?」
「うん、ほんとは名前だって
って呼びたいし
今日だってほんとは
このまま泊まってほしいし」
じりじりと近づく彼に、目を細めて笑う口元に体が熱くなる。
「…ど、こで覚えたの、その技、」
「ふふ、元々持ってたの。で?技は効いた?」
気付いた時には身体を捕まれ、彼の腕の中。
見上げると高校生の彼とは違う大人の表情をして。
「……き、いた」
「ふふ、、好きだよ」
彼が囁くように呟く私の名前は、一番ダメージの大きい必殺技だった。