第1章 大野智の場合。
「あ、助かった!
これ無いと明日の予定丸潰れだったの」
「明日、お休み?」
「ん、1日中こもる家に」
「ふふふ、楽しそう」
一瞬彼が言葉の流れを止める。
「…も一緒にいる?」
「え?」
「明日」
いえ、そこもなんですけど、そこではなくて…今、私のこと、名前で呼んでくれました?
「何、そんな驚いた顔して」
「あ、いや、今聞き間違えかと…」
「え?なに、言ってんの」
「…な、まえ」
「…え?ああ、?」
「…は、い」
彼の顔が見れない。嫌だ、大野くんが普通にする行動一つ一つが私にとっては大きすぎて、ドキドキが大きすぎて、パンクしそうになる。