第9章 戦国絵巻/幸村精市 3/23更新
意識を取り戻したのを確認すると
老中である眞田たちは、静かに部屋を後にする
今後の事を決めないといけないからである
「やはり、影武者を用意した方が……」
「適任は、忍びである仁王であろう」
などと口にしているのがの耳にも入ってきた
その会話を聞いていると
「(精市さまが、倒れてしまったのは
悲しい事だけれどコレで戦場(いくさば)には行かないわよね)」
そう考えてしまう
「(私ったら、なんて事を考えてしまったのかしら)」
武家に嫁いだからには、夫を元気に戦場に送り出すのは妻の務め
それを放棄するなどあってはならない事
自分自身の浅ましさに恥じを感じうなだれてしまう
「どうかしたのかい?」
「お許し下さいませ……」
指をつき、深々と頭を下げ詫びる
「私は、思慮の浅い女でございます」
「思慮が浅い?」
「はい……自分を恥じます」
病に倒れた夫を心配するよりも
戦場(いくさば)に行かずに自分の傍にいてくれることに喜びを感じてしまうなんて
でも、その本音を夫には決して言えない
「そんな事は無い。は、思慮深いよ」
そっと精市の手が、に触れる
「そのようなお言葉……私にはもったいないです。私は……」
私は、自分の都合しか考えられない
浅ましい女なのです
のどまで出掛かった言葉をのみこんでしまう
「オレはさ……」
「はい?」
「正直なところ……喜んでいるんだ」
ペロッと舌を出し、おどけて笑う精市