第39章 満たして/跡部景吾
一生懸命にテキストを見ていても
頭の中に入るわけでもなく
こぼれ落ちそうな涙を必死になって止めようとしても
……無駄な努力に終わりそうだよ。
私、本当に楽しみにしていたんだよ?
いくらおんなじ学校に通っているとはいえ
毎日会えないし
景吾は、部活やら生徒会で忙しいから
めったにデートだって出来ないしさ。
毎日LINEだって出来ない。
大学生にでもなったら今よりは時間が出来ると思って楽しみにしているのに
そのためにキライな勉強も頑張ってるんだからさ
そりゃあ、まだ合格圏内にはいないけど。
「……ふっ…んぐっ……」
「はあー……ったく。泣いてんじゃねーよ」
言葉とは裏腹に優しい声音
それと同時に私の背中が温かくなった。
「……泣いて……ないもっ…ん」
「ほう……じゃあ……これはなんだ?」
景吾の指が私の涙を拭う
やっぱり泣いてるのバレてる……
景吾にウソが通用しないことくらい
分かっているけど……
でも!
簡単に泣いていた、なんて認めたくないよ。
どう答えようか迷っていたら
体を反転させられて、真っ直ぐに見つめられちゃった。
「泣いてたんだろ?」
そう言うともう一度
涙を拭ってペロリと指を舐め
「しょっぱいぜ?」
そう言った景吾の顔が何故か
艶っぽく見えて
思わず私は