第39章 満たして/跡部景吾
「この成績じゃあ厳しいだろうが」
「うっ……」
わ、分かっているよ。
担任にも言われたし
「でも!! でもさっ」
「ん?」
け、景吾がキレそうになってるよ。
私にはわかるんだよ
キレる手前の景吾は、やたら忙しく
眉毛がピクピクと動くんだもん。
「せっかく別荘に来てるんだから……景吾と楽しみたい……なっ」
「……(指遊びをしながら上目遣いで見つめてくるとは)」
あれ?
やっぱりキレた?
なんか無言だし、じーっと見てるし……
「けーご……っ!」
景吾さんの顔を覗き込んだ瞬間
おでこに鋭い痛み
「ダメだ。勉強しろ」
あ~あ
やっぱりな……
いつも以上に冷たい言い方をされると
楽しみにしていた分だけ悲しくなってきちゃうし
そうなると泣くつもりはなくても
勝手に涙がでちゃうし
でも、そんな事で泣いたら景吾に
呆れられちゃうし
だから私は、黙って嗚咽が洩れないように
唇を噛み、テキストブックをみつめる。
「(泣いてるな……ったく、しょうがないヤツだぜ)」