第39章 満たして/跡部景吾
◇side◇
「ねえねえ! 景吾っ!!」
「なんだ?」
「近くに湖があるよね?」
「ああ……あるな」
分厚い洋書から視線を外すことなく
当たり前のように答えてくる。
「やっぱり、湖っていったらボートだよね?」
「だからなんだ?」
「ボートに乗りたいっ!!」
「ふー……」軽いため息を吐いて、本を閉じた景吾の瞳は……
呆れたように私を見つめてくる。
「……お前、自分の立場がわかっているのか?」
「……わかってるけどさっ」
大学受験を控えた大切な時期
彼氏である景吾は、頭も良いし余裕の合格圏内
彼女である私も景吾と同じ大学に行きたくて
馬鹿な頭をフル回転させて、勉強をしているんだけど……
まあ、アレよ
もっと努力しましょうのレベルなわけ
それでも大好きな景吾と離れたくない私は、
一念発起して受験勉強を開始
そんな私の頑張りにご褒美として
景吾が別荘に招待してくれたの
たまには勉強のことを忘れて景吾と思いっきり遊ぼうとしてたんだけど……
私の模試の結果を見た景吾が
遊ぶことを許してくれなかった。