第38章 ピアノの調べ/榊太郎
「監督、青学の竜崎先生がコートに来ていますが?」
「すぐに行く
……」
「はい」
「ミスタッチに気をつけなさい」
「わかりました」
「跡部」
「なんでしょうか?」
「のミスタッチの箇所をチェックしてやってくれ」
「わかりました」
先生の立場に戻ったあなたは、何も言わずに音楽室を出て行く。
後ろ姿にすがりつきたくなるのを必死で抑えつけないと、壊れてしまいそうになる。
ううん、違う。
コワレテシマイタイ___
自然に流れでる涙を止める術を、私は知らない。
こんなにも苦しくて、切なくなるなら
忘れさりたい
「おい……」
腕を引かれ、跡部くんの腕の中に……
「だからやめておけって言ったろ?」
「ん……わかってる……けど……」
いつものように跡部くんの背中に腕をまわす。
「お願い……抱いて」
「ああ……が望むならな」
跡部くんのキスは優しい
何度も何度も唇を啄んでくる
この唇が彼だったら
そう思うだけで私の口からは、甘い吐息が洩れだす
口内を荒らす舌が彼だったら
そう思うと無意識に頭を抱えこんでしまう。
いつの間にか乱された制服
うなじから鎖骨にかけて軽い傷み
彼からの愛のしるしだったらと思うと心が震えてくる
胸からおへそのあたりをなぞるように這っていく舌
女の部分が刺激されてしまう
跡部くんに抱かれているのに彼に抱かれている錯覚を起こしてしまう
「……」
「ん……」
求めてあってしまうくちびる