第36章 男は優しさ/樺地祟弘
「むーねちゃん」
テニス部の部室のドアを開けてすぐに
大きくて広い背中に抱きつく
「はあ~。癒やされる……」
「?」
祟ちゃんの良さを分かっているのは
私ひとりだけでいい
口下手だから自分の想いは口にしないけど
その分、態度で示してくれるもん
彼は嘘をつかない
まっすぐに私だけを見つめてくれる
(まあ、景吾に従順すぎるけどさ)
「……さん?」
「今日はお邪魔虫がいないから……甘えたいの」
祟ちゃんの背中に顔をうずめているだけで
満足な筈なのに
それ以上を求めたくなってしまうなんて……
そんな私の気持ちが伝わったのかな?
祟ちゃんったら体制をかえて、私を抱き上げてくれた
曇りのない純粋無垢な瞳が、私を捉えて離さない
「んー……」
目を瞑ってキスの催促
ふれるだけの優しいキス
でも、今日は物足りないよ
「んー……もっと……」
唇を突き出して、ちゅっちゅっとリップ音をたてると
唇を包みこむように重ねてくれる。
祟ちゃんのキスはいつでも優しい
私を大事に大切にしてくれているのが
わかるから
私は、いつでも幸せな気持ちになれる