第15章 素敵な夜/仁王雅治 3/30更新
*仁王side*
前から気になっていた
タイミングを計ってデートに誘うつもりだったんじゃが…
今日は、タイミングが良いぜよ
友だちのドタキャンに便乗させてもらうかのぅ
そう思ってに声を掛けると戸惑っているものの
「じゃあ……よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる
うん?
呼び名のコトか?
俺の心の中では、名前呼びじゃよ
薄暗い中での舞台観劇
前を見ているものの
一生懸命演じてる役者さんには、ちと
悪いと思うが
集中して観ていられん
ちょっと、身体を動かせば
ふれてしまいそうで、ガラにもなく
胸がドキドキじゃよ
ドキドキしながら考える
チャンスは、モノにせんと
いかんじゃろ
そう思った俺は、見終わったあとに
「舞台のお礼じゃ。ついてきんしゃい」
「えっ?」
彼女の肩を抱き、歩きはじめる
ちょうど良かったぜよ
この近くには、ブンちゃんがやっている
カフェバーがある
あそこなら、酒はあるし
食いもんも上手いしな
そう思って連れてきたんじゃが
ブンちゃんが、余計な事を言いそうになるわ
は、やたらハイペースで
酒を呑み始めるし……
「うふふー」
頬を桜色に染め、とろんとした瞳で俺を見つめる
こりゃあ、完璧に酔ってるじゃろ?
「おかわりちょーだい」
グラスをぶんぶんと振り回しちょるし
「ブンちゃん、水くれ」
「大丈夫なのか?」
「ヤバいじゃろ。タクシー呼んでくれ」
「送り狼になるなよ?」
わかっとるよ
酔っ払たを抱くわけないじゃろう
一夜限りの女にする気はない
「やだぁ~。男同士でこしょこしょして~」
ふらふらした足取りで立ち上がり、ブンちゃんに詰め寄っとるし
「さっ、もう帰るぞ?」
「やーだあー。もっと呑みたい……」
そんな潤んだ瞳で見るんじゃなか
これでも、結構ガマンしとるんじゃから
酔っている女の独特の色気を放たれて
ガマンしている俺って
エラいじゃろ?
俺も大人になった証拠じゃ