第15章 素敵な夜/仁王雅治 3/30更新
「なかなか面白い舞台だったな」
「そうですね」
そう答えるものの
実は、全然覚えていない
舞台を観るよりも隣りに座っていた仁王さんが気になってしまって
時折、身体がふれたりして
そのたびに心臓が、ドキドキ
息を吸うのも苦しくなったり
嬉しいけど、緊張したり
そんな私のコトを気にかけることもなく
舞台を真剣に観ている仁王さんの横顔ばかり見ていてしまった私
横顔も格好良いなんて
反則だわ
「いらっしゃーい。珍しいじゃん。仁王が女連れなんてサ」
「一言、余計じゃ。ブンちゃん」
舞台のお礼にって
仁王さんが食事をご馳走してくれるコトになって連れてこられたカフェバー
店内の雰囲気も良いし、赤い髪の人は
お友達なのかな?
「お前ってさ……」
「?」
私の顔を覗き込んでくる赤髪の人
「もしかしたら……さん?」
ん?
私の知り合いだっけ?
「どうして私の名前を?お知り合いでしたっけ?」
「んー?そりゃあ、いつも…」
いつも?
「ブンちゃん。怒るぜよ?」
「わりー、わりー」
いつもと違う。ちょっと声が冷たくなっている?仁王さん
「ごゆっくり~」
悪びれた様子もなく、含み笑いの赤髪さんは、仁王さんの肩をぽんっと軽く叩いてキッチンの方へと姿を消していった
「仁王さん?」
「ったく。余計な事を……」
「うん?」
「なんでもない。気にするんじゃなか」
えっ?
軽くなんだけど、頭を撫でられてしまい
一気に頬が緩んできちゃう