第15章 素敵な夜/仁王雅治 3/30更新
シャンプー台に設置されている椅子に腰を掛けると、すぐに椅子の背もたれが倒されていく
仁王さんと目線が合わせられない私は、すぐに瞳を閉じてしまう
「そうやって瞳を閉じられてしまうと……」
「?」
何やら愉しげな仁王さんの声に集中して耳を傾けていると間近で
「キスをせがまれているようじゃな」
「!?」
突然の言葉に絶句してしまうし、一気に顔全体が熱をもつ
「くくっ……可愛い反応じゃよ」
「もう……からかわないでくださいよぅ」
「本気なんじゃけど?」
仁王さんの指が、私の耳にふれる
ドキドキを通り越して、心臓が止まっちゃいそうだよ
私の気持ちを知らない仁王さん
冗談でも、期待を持たせないでよ
嬉しくなってしまうのと同時に
悲しくもなってしまう
複雑だわ