第1章 アンラッキーアイテム//緑間
先程の彼女を見つけ、手招きする。
友人と話していたが、彼女も気付いたようだ。
こちらへ向かってくる。
「どうかしました…?」
少し不審そうに振る舞う彼女に、先程拾ったハンカチを見せる。
「これは、キミのではないか?」
「あ…!そうです。拾ってくださったんですね。ありがとうございます」
先程までは不審そうにしていた顔が、一気に眩い笑顔に変わる。
不覚にも、その笑顔から目が離せなかった。
ハンカチを渡してしまうのが、少しもったいないような気がする。
言葉を発しない俺に、不思議そうに話しかける。
「でも、よくここだってわかりましたね」
どうやら彼女は、俺を同じ学年だと思っていないらしい。
「さっき話した高尾が、キミのことを知ってたのだよ。ちなみに、俺は五組なのだよ」
「え?…あ、ごめんなさい、私てっきり先輩だと思ってて。同い年だったんですね」
ふふっと柔らかい笑顔に、少し顔が赤くなった気がした。
「だから、敬語は必要ないのだよ」
「あ、そっか、つい…。ハンカチ、どうもありがとう」
彼女は俺の手からハンカチを受け取る。
笑顔が眩しい。
「名前、なんていうの?」
「…緑間だ。緑間 真太郎」
「あ、だから真ちゃんなのね。私は岬 真奈美っていうの。よろしくね、真ちゃん」
またニッコリと笑顔を向けると、またね、と岬は、友人の元へ向かった。
…アンラッキーでは、無かったのだよ…。
鼓動の早い心臓を感じながら、ゆっくりと、自分の教室へ戻る。
一瞬にして芽生えた恋心を、どうしたら良いのか自分でもわからなかった。
いや、とりあえず、高尾にバレたら面倒なことだけはわかった。
end
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