第4章 独占欲///赤司夢
日課の早朝ロードワークの途中。
必ず会う、可愛らしい犬を連れた、黒髪ストレートヘアの彼女。
毎日、彼女から
「おはようございます」
と笑顔で挨拶をしてくれた。
それが一カ月くらい続いたある日。
オレは近くの公園の自販機で、スポーツドリンクを買って飲んでいた。
普段は早朝のため、その公園には誰もいない。
そこへ、彼女が犬を連れて来た。
「…あ」
また会いましたね、と柔らかな笑顔で近づいてくる彼女。
「そうですね珍しいですね。どうしたんですか?」
毎日同じ時間にこの公園に来ているが、今まで一度も会ったことはない。
「この子がのどが渇いてるみたいだったので…。今日は水を持ってくるの忘れちゃって」
と、自販機に用がある様だった。
彼女は水を買い、持ってきていた皿に水を入れ、愛犬に飲ませていた。
オレたちは近くのベンチに腰掛けた。
「毎日、走ってるんですか?」
「そうですね。貴方こそ、毎日散歩を?」
そんなたわいもない会話をしていて、彼女が岬 真奈美という名前であること、同じ高校で同じ学年であること、愛犬の名前がラッキーであることが分かった。
「同い年だったんだね。でも、一度も会ったことないね」
「そうですね。…でも、私、実は一方的に知ってたんですよ」
「え?」
「新入生代表に選ばれてましたよね?すごい方が入ってきたんだなぁって思ってたんですよ」
「…だから、朝、初めて会った時はビックリしたし、毎日挨拶が出来るのが、実は少し嬉しかったりして」
思いもよらず、彼女から嬉しい言葉が出る。
彼女の言う嬉しいというのは、恋愛感情というよりは、尊敬の念だろうが。
「そうか…引き止めて悪かったね」
「こちらこそ、時間取っちゃってごめんなさい。じゃぁ、失礼しますね」
行くよラッキー、と彼女は犬を連れて公園を去っていく。
それから、毎日公園で休憩がてら、少しの間彼女と話をするのが日課になっていた。
「学校ではなぜか会ったことないね」
「そうですね。クラスが遠いからですかね」
「人数はすごく多いからね。最近、移動する時はいつも君を探してしまうよ」
「ふふっ、私もです」
「じゃぁ、オレは行くよ」
「私も。じゃぁ、また」