第2章 続 アンラッキーアイテム//緑間
結局教室まで戻ってみたものの、日傘は見つからない。
「いったいどこに落としたのだ…」
誰もいない教室で、ふいに、独り言が漏れる。
ラッキーアイテムなど、持っていない方が良かった。
そんなことまで考えていた。
仕方ない、体育館に戻ろう。
そう思い、教室を出た。
「あ、真ちゃん…!」
幻だろうか。
俺の日傘を持った岬が、こちらへ走ってくる。
「良かった!さっき廊下に、見覚えのある日傘が落ちてたから拾ったの。緑間って、ちゃんと名前書いてるんだね」
ふふっと柔らかに笑う岬。
「連絡先も知らないし、どうしようかと思って、とりあえず真ちゃんの机に置いていこうと思ったの。まさかいるなんて、思わなかったよ。なんだか今日は縁があるね」
今の状況が飲み込めず、思考が停止している俺に、岬は日傘を差し出す。
…ラッキーアイテム…
「岬…俺と…付き合ってくれないか」
「…え?」
差し出された日傘を受け取ることなく、言葉を告げる。
突然の俺の言葉に、今度は岬が固まっている。
「今日のラッキーアイテムが、岬を俺に引き寄せてくれた。これは何かの縁…いや、運命なのだよ」
「…ほ、本気で言ってるの?」
「告白など、そんな生半可な気持ちで出来るものではないだろう。人生で初めてなのだよ、こんなことを言うのは…」
ましてや、今日会ったばかりで、お互いのことなどほとんど知らない。
自分でも、おかしなことを言っている感覚はあった。
さっきの高尾の言葉に、感化されたのかもしれない。
「で、でも、お互いのこと何もしらないよ?」
「…これから知っていけばいいのだよ」
「…好きだ、岬」