第2章 続 アンラッキーアイテム//緑間
授業も終わり、部活に向かうため高尾と支度をしていた。
「真ちゃん!」
教室の扉の先に、笑顔で手を振っている岬がいた。
岬に気づいたクラスの男子が次々と振り返り、教室がザワつく。
そんなに有名だったのか…
「えぇっ何なに真ちゃんどういうこと?!」
岬に気づいた高尾は目を白黒させている。
「高尾には関係ないだろう」
高尾を横目に、岬の元へ向かう。
昼のことなど何も伝えていないのだから、それは驚くだろうが、高尾は無視してやった。
「真ちゃん、さっきはほんとありがとう。はい」
笑顔を絶やさぬまま、可愛らしい封筒を渡される。
「いや、問題ないのだよ。こっちまで来させて悪いな」
「ううん、全然平気だよ」
たわいのない会話をしていると、慌てたように高尾が近づいてきた。
「いつの間に二人仲良くなってんの?!」
「真ちゃんがお昼にお金を貸してくれたんだよ。だから、返しに来たの。ね?」
「あぁ。それだけなのだよ」
「それだけって…だって真ちゃんって呼んでんじゃん!俺にはヤメロヤメロ言うくせに、真ちゃんってば『おい!』」
「えっそうだったの?ごめんね、馴れ馴れしく呼んじゃってたね」
高尾の言葉を聞いて、慌て出す岬。
いや、お前はいいのだよ。
「いーんだよ岬ちゃんは!むしろ真ちゃんって呼ばれたいんじゃねー?ね、真ちゃん」
「…おい、高尾」
心を見透かされたようで、思わず赤面する。
ヒューヒューと調子に乗った高尾に、一発食らわせてやりたい衝動を抑えながら、高尾を睨みつける。
「なんと呼ばれようと問題はないのだよ。気にするな」
「そ、そう?それならいいんだけど…」
なおも岬は困った表情を浮かべていると、後ろから『真奈美ー』と友人らしき人物が岬を呼んでいた。
「あっ…真ちゃ…えっと…緑間くん、ほんとありがとね。じゃぁね」
岬はそう言うと、友人のもとへ走っていった。