第12章 本当の気持ちを
彼のゴールを見届けた。
(本当に、1位で……)
1日目の山岳リザルトは、東堂が得た。IHの舞台にふさわしい、白熱したレースだった。
(……さて、行かないと)
東堂のゴールを間近で見届けてから、私も一つ決心をする。
東堂だけじゃない。私だって、頑張らなきゃ。
最後までこのレースを見届けることができないのは、とても心が痛むけど。
(お父さんと、話してみるよ)
そして、私は今日中に神奈川をたつことにした。
新幹線を待っている間、一件の着信が。
「……もしもし」
私が落ち着いた声音で電話に出ると、相手は驚いたみたいだ。
『宮坂さん、今日は大会を見に来てくれてありがとう』
「うん、こちらこそ白熱したレースを見せてくれてありがとうございました」
『ゴール近くで、俺の名前を呼んでくれたな?』
「……とっさだったからね」
『ちゃんと、届いてたぞ』
もっと東堂は大はしゃぎで連絡をくれるのかと思っていたから、少し驚く。
「あの、ごめんね。私、大会を最後まで見れない」
『!?』
「私今、新幹線を待ってるの」
本当に薄情な女だ。大切な人を最後まで見届けないなんて。
『そう、か。残念だ』
「東堂の姿に勇気づけられた。頑張って、父と話してみる。……本当に勝手で申し訳ないんだけど」
『……いや、待っている。IH優勝の称号を持って、な』
「……うん」
東堂が努力をしているところ、悩んでいるところ、みんな見てきた。だからこそ、彼が山岳リザルトを取ったことが嬉しくてたまらない。直接会って、いろいろな言葉をかけたい。
(でも、全て終わってから)
自分のこともすべて終わってから、彼とまっすぐに向き合うんだ。