第11章 女同士の
「あっ」
床に散らばる書類。
「ごめんなさい」
私はぶつかった人にそう謝り、しゃがんでプリントに手を伸ばす。すると、プリントが故意にその人物によって踏まれる。
『ここまでやってもわかんないのかな? 言ってるじゃない、自転車競技部のみんなと仲良くするのやめてよ』
「……」
私はさっさとプリントをかき集め、逃げるようにして生徒会室に入った。
(生徒会室に入れば、みんながいる)
生徒会室のドアを開けると、当たり前のように東堂、荒北、新開君の姿がある。
「おー、宮坂さん! ようやく来たな、早く昼を食べに行こうではないか!」
「おっせーよ、バァカ」
「まあ、いいじゃないか。行こう、宮坂さん!」
彼らは何も知らない。いや、知らなくてもいいんだ。
「やはり栄養バランスのいい食事が一番だ! パスタは良いぞ!」
箸で器用にパスタを食べる東堂を見て、私の表情筋は自然と柔らかくなる。
「まあ、これから大会があるしな。体の調子が万全な状態で試合に挑まないと!」
「んなこと言うなら少しはエナジーバー自重しろ! どう考えたってお前の場合はカロリー取り過ぎだろうが!」
「スプリンターだから良いんだよ」
「いみわかんねー」
そんなことを話しながらも進む箸。そんな彼らを見ていると、今までされた仕打ちなんてどうでもよく思えてくる。彼らと一緒にいるためなら、何だって耐えられる。
「自転車競技部はまだ3年が引退してないもんね。これからじゃん!」
「ああ! その時はぜひ、応援に来てくれ!」
「勿論だよ。うちの学校は野球部がない分、応援団部も自転車競技部の応援を楽しみにしているみたいだよ。それに、今年は地元の箱根の山からなんでしょ?」
今までこんなに自転車競技部とかかわってきたくせに、一度も試合は見に行けてないから……。
「応援してるよ」
そして、食器を片づけようとトレーを持って立ち上がると、
「そういえば宮坂さん、上履き新しいな」
東堂の言葉に、心臓が大きく鼓動する。
「まぁね。3年になるとさすがにぼろぼろになってきてさ」
「3年になったのなら、卒業まで無理やり履けばよいものを」
(落書きされたから履けない……なんて言えないしなぁ)
「嫌だよ恥ずかしい」
私は笑いながらごまかすことしかできなかった……。