第11章 全身組でゆずれない
キヨ「よし、帰ろ」
そうなりますよね。でもここでレトさんを待ってるなんて言ったら…とか恐ろしくて考えられないです。
キヨ「てか腹へった…何食う?」
まさかまさかの、晩ご飯まで…
「あ、えっと…」
私がどうしようもできないこの状況に、外見には出さず慌てふためいていると…
「…!」
キヨ「手、あったけぇ」
両手をキヨさんに取られる。
梅雨に差し掛かったばかりの都内はなぜか今日とても冷え込んでいて、昼間の晴天で薄着だったキヨさんの手はとても冷たかった。
「寒いんですか?」
キヨ「うーん、ちょっとだけ」
そんなキヨさんが少し不憫に思えて、同情という意味で手を握り返した。
「…」
キヨ「…」
静寂の中、二人っきりのロビーで目が合う。
するとキヨさんの顔が少しずつ自分に近づいてくるのが分かった。